2010/11/08

広島市が礼賛する「子どもの権利条例」の先進地区、川崎市では・・・「川崎の中学生を書類送検へ 教諭への集団暴行容疑」

 これが、「子どもの権利条例」先進都市の実情です。

 対教師暴力は、「子どもの権利条例」で防げません。

 掃除中に遊んでいるのを注意されただけで切れて集団暴行を加えるなどという行動に出る中学生は、一体どのような教育を受けてきたのか。一体、「子どもの権利条例」の下、何を教えられてきたのか。

 広島市の説明会で、生徒指導担当の先生が、生徒指導の現場の実態を訴え、「広島市子ども条例」が、生徒指導をますます困難にすることを切実に訴えたにも拘わらず、広島市こども未来局の担当者は、権利を教えればなくなる、と余りにも能天気で無責任な回答しかしませんでした。

 その一つの答えは、「子ども条例」先進都市・川崎で出たわけです。

 広島市の発想には、根本において誤りがあるといわねばなりません。

 いじめが最も少ない県が福島県という調査結果がありました。1万人に一人です。これは、会津藩の伝統が地元に息づいている結果と見ることが出来るでしょう。

 会津日新館の「什の掟」は有名ですが、「子ども条例」の「理念」とは真っ向から対立するように思われます。

 一、年長者の言うことに背いてはなりませぬ
 一、年長者には御辞儀をしなければなりませぬ
 一、嘘言を言うことはなりませぬ
 一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
 一、弱い者をいじめてはなりませぬ
 一、戸外で物を食べてはなりませぬ
 一、戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ
  ならぬことは ならぬものです

「ならぬことは ならぬものです」

 広島市こども未来局の次長は、子供に納得ゆくまで説明することが大切で、頭ごなしに押し付けることはいけない、とお説教をされました。自分でも実践をはじめ、自分の意識を変えようとしているのだということです。

 しかし、「ならぬことは ならぬものです」と、理屈抜きで徳目を叩きこむことが、幼少期には特に必要な時期があります。先ずは身につけてから、それを反省して真に納得して自分のものとするのは思春期以降でありましょう。理屈で説明して頭でっかちになっていいことは一つもありません。口ばかり達者になって、実際には何も出来ない、ひ弱な子供しか出来ないでしょう。ちょっとのことで切れる子供を育てるのは、実に簡単なことです。


川崎の中学生を書類送検へ 教諭への集団暴行容疑
2010.11.8 01:30
 川崎市中原区の市立中学で先月、男性教諭が2年生の生徒数人に暴行を受けて顔の骨を折るけがを負った事件で、神奈川県警は8日にも、暴行などの疑いで、男子生徒(14)を横浜地検川崎支部に書類送検、傷害などの非行事実で当時13歳の男子生徒5人を児童相談所に送致や通告する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。

 捜査関係者によると、生徒らは10月8日午前10時ごろ、校内3階の廊下で、男性教諭数人に殴るけるの暴行を加えた疑いが持たれている。暴行を受けた30代の教諭が顔の骨を折る重傷で病院に搬送され、40代の教諭が腰などに軽傷を負った。

 県警や市教委によると、暴行は前期終業式後の掃除の時間に行われた。軽傷を負った教諭が遊んでいた生徒を注意した際、生徒数人ともみ合いとなり、重傷を負った教諭らが止めに入ったところ、暴行を受けたという。生徒側は「遊んでいたのを注意されて腹が立った」などと話しているという。

 川崎市では今年6月、同市多摩区の市立中学3年の男子生徒=当時(14)=が校内暴力などのいじめを理由に自殺をする問題が発生。市教委はいじめなどの校内暴力の防止に向けて対策に力を入れている最中だった。市教委は「このような問題が起きて非常に残念。保護者とも連携して対策を考えていきたい」と話している。

2010/09/16

広島市子ども条例(子どもの権利条例)、9月議会上程見送り!

 中国新聞が報じた記事が以下の通りです。



 3月議会での上程見送りに続いて今度で2度目の見送りとなります。


 6月議会も上程されるかもしれないといううわさもありましたが、早々に沙汰やみになった経緯もありました。


 9月議会での上程見送りの意味は大きいと思われます。


 何となれば、来年の統一地方選挙において、広島市長選挙も行われます。それまでに12月議会、3月議会がありますが、既に選挙モードに突入し、条例制定どころではなくなる、とも思われるからです。当然予算審議もあります。


 しかしながら、市長が「政治生命をかける」とまで口に出して言った(らしい)条例ですので、手段を選ばず(既に担当部局の「こども未来局」は勿論、「広島市教育委員会」もなりふりかまわぬ動きで突っ走っているとの噂です)に制定をごり押ししてくることも考えられます。


 家庭と教育の問題ではありますが、「条例制定」となるとどうしても議会や役所という「政治」の動向が絡んできます。本来、政治の具ではありませんが、政治によって家庭や教育が翻弄されるという現実の中では、サイレントマジョリティたる保護者や教師たちも声を上げざるを得なかった、というのが、「教師と保護者の会」の思いのようです。


 今の時代、地元に責任を取るのは、どこの誰とも分からない中央の官庁でもなく、政治家でもなく、一人ひとりであるということを肝に銘じて、「条例制定阻止」まで頑張っていきたいと思います。

街頭行進2 広島市子ども条例制定に反対する教師と保護者が立ちあがりました!

街頭行進の映像をYOUTUBEにアップされた方がいますので、以下ご紹介いたします。


街頭行進1 広島市子ども条例(子どもの権利条例)の制定に反対する広島の教師と保護者が立ちあがりました!




 8月29日(日)、100年に一度の猛暑の中、広島の子供たちを守らねばの一念で、教師と保護者を中心とした広島市民300名余が、街頭行進を行いました。

 県庁前広場に集合した市民は、およそ100名の梯団を組み、13時に出発。およそ一時間をかけて、広島市内の繁華街を行進いたしました。手作りのプラカードと横幕を持ち、広く一般市民の方々に、「子ども条例」の問題をアピールしたのです。

 配布したチラシ約3000枚。多くの方がチラシに見入っておられました。

広島県教委が「広島市子ども条例」の問題点に言及!

この9月議会に「広島市子ども条例」が上程される可能性が高いと言われていましたが、9月1日の中国新聞報道で、見送りが決まったとあり、一安心いたしました。


 表向きに言われることと、裏で実際に画策されていることがあまりにも違い過ぎるというのが最近の政治です。


 それが確信的に行われているのが「子ども条例」であり、子供を出汁にして教育現場への介入の橋頭保にしようというものです。


 8月19日の県議会文教委員会において、中津県議会議員の質問に対して、県教育委員会の教育部長の答弁においてこのことを指摘していたのは大変印象深く、中国新聞8月20日の記事でも5段抜きで報道していました。

 このやりとりが、「日刊廣島」にて報道されていましたので、以下転記させて頂きます。

「文教委員会質疑応答」

中津議員
 広島市は子ども条例についてパンフレットを配布するなどしている。子ども条例について、広島市から県教育委員会へは、何か働きかけはあったか。

教育部長
 広島市教育委員会から、子ども条例の素案にかかわるパンフレットを「広島市内及び近郊の県立学校へ配布したい」という意向がしめされた。また、条例の骨子の試案について説明を受けた。

中津議員
 パンフレットの配布についてどのように回答したのか。

教育部長
 現時点では回答していない。

中津議員
 回答していないのはなぜか。また今後の対応は。

教育部長
 条例素案では、子どもの自由な意見表明や参加する権利及び「子どもの権利擁護委員会」の設置について述べている。広島市の制定する条例を広島市民の子どもが通学する県立学校に対して適用させる条項もあり、生徒が学校で定められた校則等に対して意見表明や救済を求めることなどによって、円滑な学校運営の妨げとなることが懸念される。そのため県教育委員会としては素案であるパンフレットを県立学校に配布されることの影響について検討している。

中津議員
 条例化されることにより、どのような懸念があるか。

教育部長
 「子どもが参加する環境の整備」の項目には、子どもの自由な意見表明や参加する権利について述べられており、例えば「バイクの三ない運動」や「携帯電話の校内持ち込み禁止」などの校則等について、権利擁護委員会への救済申し立てができるシステムを利用して、学校もしくは設置者に対して、校務運営に関わる内容について干渉してくる可能性もあると懸念される。これは過去「八者合意文書」によって、「連携」の名の下に職員団体や運動団体が、運動論に基づいた主張を展開することを正当化するような状況がつくられ、校長権限が著しく制約された本県の歴史を踏まえたとき、校長権限が制約され円滑な学校運営が妨げられる事態を危惧させるものと考えている。

中津議員
 子ども条例ということから、健康福祉こども家庭課など、教育委員会以外の部局も関連するが、広島市からの他部局への働きかけはあったのか。

教育部長
 他部局への状況については承知していない。

杉西副委員長
 広島市の働きかけへの対応は慎重に行わなければならない。回答する際は、県議会にも諮っていただきたい。



以下は、中国新聞に掲載された記事です。

2010/05/17

新たな展開!広島市の子供たちを守るため、教師と保護者が立ち上がる!

「広島市子ども条例」制定に反対し子供を守る教師と保護者の会

立ち上がりました。

本BLOGも応援していきます!!!

ホームページは分かりやすく問題点を提示しています。

お粗末!広島市子ども条例について考えるシンポジウム

広島市子ども未来局の中村課長は、中立であるべき公務員の立場を逸脱して、条例制定賛成派のパネラーとして席に座った。

この一事をもってしても、広島市のおかしさは免れない。

本来なら、賛否両論を「聴く」立場でなければならないはずだろう。

このシンポジウムは作為に満ちていたが、会場に集った市民の様子は圧倒的に反対の声が大きかった。


「まず制定ありき」の市の姿勢は、市民の声を聴くどころか、「聴く必要はない(某)」との立場に貫かれている。

お上の言うことに黙って従っていればいいのだと言わんばかりの広島市のやり方は、ほとんどファシズムだ。


ファシズムは国家社会主義の訳だが、ソーシャリストが行政権を握るとファシズム化するという公理が成り立ちそうだ。

今の広島市は、ファシズムに侵されている。

会場は、こわばった空気、違和感が満ち溢れていたが、「子ども条例」が制定されたら、一体子供たちはどうなってしまうのか、不安と危機感を高めた保護者たちのストレートな声によってこわばりが突き破られた。


会場には、条例制定推進派の市議や副市長ら、また教育委員会の関係者らも多く顔を揃えていた。

2010/05/15

22.5.11広島市子ども条例反対署名を追加提出 新聞報道

【産経新聞報道】

子ども条例反対署名を追加提出 広島

 広島市が制定をめざしている「子ども条例」をめぐり、「県高等学校PTA連合会OB会長の会」(渡辺綾子代表)などが11日、制定しないことを求める約1800人分の反対署名を市議会に提出した。同会などは2月にも同様の趣旨の署名を提出しており、今回分を合わせた署名者数は4万5千462人になった。

 同条例については議会で賛否が分かれ、市は目標としていた昨年度中の制定を断念する一方、「理解をさらに広める必要がある」として、今年度予算に推進費330万円を計上。今月16日に、市民らが賛否を議論するパネルディスカッションを初めて開く。

 反対署名を提出した渡辺代表は「市側は『条例制定への理解を広める』としているが、理解すればするほど反対の立場を強める保護者らが多い。引き続き反対の声を上げ続けていきたい」と話している。

【中国新聞報道】

子ども条例に反対署名1835名分を追加 市議会に提出

 広島市が提案を目指している子ども条例に反対する団体などが11日、制定しないよう求める1835名分の署名を市議会に追加提出した。

 県高等学校PTA連合会OB会長の会(渡辺綾子代表)など20団体が署名活動に取り組み、この日は3人が市議会事務局を訪れ、職員に署名を手渡した。

 2月にも4万3627名分を提出している。渡辺代表は「子どもに過度の権利を与えると学校や家庭が混乱する」と主張している。

 「こどもが安心して生きる」など四つの柱を掲げた子ども条例について市は、昨年度中の制定をめざしていきたいが「市民の理解をさらに得る必要がある」として市議会定例会への提案を見送っている。


*********************************************

2010/02/04

広島市PTA協議会が、「広島市子ども条例」の制定に反対の声明を発表!広島市に要望書を提出!!

広島市の小中学校に通う子供達の保護者と教師の会である広島市PTA協議会が、2月2日、広島市役所を訪れ、広島市が制定をめざす「子ども条例」に、反対の声明を出し、広島市に要望書を提出しました。


ぜひとも激励の声を届けましょう!!

広島市PTA協議会  会長代行  谷村敏彦
 
FAX 082-242-7196
TEL 082-242-7195

ホームページ(要望書あり)

***************************

NHKオンラインニュース(2010年2月2日)

広島市が制定を目指している「子ども条例」について、広島市内の小中学校のPTAが「必要性が理解できない」などとして、2日、条例の制定に反対する声明文を広島市に提出しました。


広島市は、子どもがいじめや虐待を受けることのない安全な環境のもとで、生きる権利があることなどを盛り込んだ「子ども条例」を今年度中に制定することを目指しています。


これについて、広島市内の小中学校に通う約9万6000人の児童と生徒の保護者などで作る「広島市PTA協議会」は、2日、広島市役所で記者会見し、「子ども条例」の制定に反対する声明文を、広島市に提出したことを明らかにしました。


声明文では、条例の制定に反対する理由について、その必要性が理解できないことや、権利の乱用により家庭や学校での子どもの指導に混乱が生じる懸念があることなどをあげています。


広島市PTA協議会の谷村敏彦会長代行は「いじめや虐待についても現在の法律で十分対応できる。条例を作るならPTAが100%賛成するものにすべきだ」と話しています。


広島市は、今回の声明文について「今後、適切に対応する」と話しています。


この条例の制定をめぐっては、ほかの市民グループも反対を訴える署名活動を行っているほか、市議会からも「効果があるのか疑問だ」などと必要性を問う声があがっています。



広島ホームテレビ

「広島市の子ども条例に、広島市PTA協議会が反対」



広島市が進めている「子ども条例」について広島市のPTA協議会は「条例は必要はない」「乱用が心配」として制定に反対を表明し意見書を広島市に提出しました。広島市の条例案では子どもが権利を侵されたときの駆け込み寺として「擁護委員会」を設置して権利を侵害した者から事情を聞くことができるなどとしています。PTA連合会の谷村代表代行は「虐待もいじめも現行の法律で対応できる。こちらに力を入れた方が良い」と話しています。意見書を提出したのは、広島市の小中学校に通う児童、生徒およそ9万6千人の保護者らでつくる広島市PTA協議会です。協議会は条例が必要ないことや条例が乱用され学校での指導ができなくなる恐れがあるなどとして制定に反対を表明し秋葉市長と藤田市議会議長に宛てた意見書を提出しました。谷村代表代行は「条例ができて権利が誇張された場合、本当にいい子が育つのか」と話しました。広島市は要望書について「適切に対応する」としていて、今年度中の制定を目指しています。

(02/02 18:52)


NNNニュース

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その4

教育現場への危惧

 福田 子供達は長時間学校で過ごしているので、学校現場の充実を考えてほしい。条例が出来ればモンスターペアレントに苦しむことになるんじゃないかと、学校に負担がかかることを心配する声がたくさん挙がっていました。

 渡辺 「子供達に規範意識、道徳心を持たせる公の精神を」と教育基本法が改正され、教育現場でのいじめや暴力行為に歯止めがかかると安心した矢先だけに残念です。もちろん家庭でのしつけが大事ですが、条例制定となると道徳心とか規範意識、公共の精神、規律など、とても教えにくくなるわけです。個別に指導したり、ダメだと教えることすら困難になってくる。国で掲げたことに対して整合性がないですよね。

 橋本 そんな状況で、市は子供達を集めて条例の話を聞かせてるんですよ。既成事実をもうつくっている。「二回説明会をして、それで子供達の理解を得たっていう表現になるわけですよ。バカバカしい。

 ―この条例が通れば、学校がどんな状態になっても先生の責任ではなくなりませんか。

 橋本 そう。

 福田 そう。

 渡辺 そうなんですよ。やる気のない、自分は教育労働者だと公言している先生は責任逃れ、教育者でありたいと願う、やる気のある先生は、指導したくても手も足も出なくてダルマ状態になる。困るのは管理職でしょうね。

 福田 一番困るのは親ですよ。

 渡辺 当事者の皆様が子供のことを考えて「とんでもない」「いらない」「あってはならない」と叫び続けています。
 最後に、子供に権利を保障する「自己決定権を認める」発想は一九六〇年のアメリカに広く見られたそうです。大人の決めた枠組みから子供を解放する「子ども解放運動」なるものが起こりその結果、青少年の精神的な荒廃、教育界の混乱が起きたそうです。学校から規則・規律が消えて暴力とセックスが横行するようになってしまった。
 子供の未熟な意見や判断に「権利」のお墨付きを与えることで家庭や教育現場が混乱することは容易に予測できます。多くの市民の皆様、市議会議員の皆様にご考察いただければと思います。
 未来を託す子供達のために矢面に立ってご活動いただくお二人に感謝申し上げます。本日はありがとうございました。

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その3

市の言い分

 橋本 こども未来局の話しや、市が各区のPTAを集めて説明する時に必ずおっしゃるのが「いじめがこれだけある、暴力がこれだけある、つらい思いをしている子どもがいる」という説明が主で、だから条例がいるんだとそればかり。我々が反対している理由の一つは、全体でゼロ歳児から十八歳までを権利だけで括って何を教えるのかということなんですね。
 虐待防止ならすでに虐待防止条例もある。色々あるけれど知らない方が多いわけですから。子供の権利を謳った子供の育成なんて有り得ないし、現実には、条例でイジメが無くなるわけではない。「いじめられたくない」と言っていじめられなくなる訳ではない。「殴られたくない」と言ってもケンカが収まる訳ではない。そんな訳はない。現実からは乖離している。現実論で、具体論で対処しないと、権利でくくっても実際には守れない。

 渡辺 いじめ、暴力は実際には増えている。いじめを本当になくそうと思えば「規範意識や道徳をこのように教えていくことになりました。市民の皆さん協力してください」と言えばいくらでも協力する。例えば「万引きはゲームじゃない」という県のキャンペーンは今でも広く店舗でアナウンスされています。

 橋本 喜んで協力しますよ。「子供はこの町の宝です」とか「いじめ、暴力は恥ずかしい行いです」とかね。

 渡辺 市民をあげてキャンペーンをすれば少しはいじめも改善するのではないでしょうか。

 橋本 ホントにね、なぜこんな条例をやろうとしているのか分からない。我々の税金を使ってね。

 渡辺 PTAが多くの反対意見を持ち込んでも公表もしていただけないし。

 橋本 市は市P協を説得しようとして、指導二課を通じてやっていますがいまのところ、はねつけているようです。今後もPTAは反対していくと思いますが。

 福田 いくら反対したってそれでもやるって言うんだから。

 橋本 我々市民がフォローしますよ。

 ―そんな状況でなぜごり押しするのか、説明もされないとなると、意図・真意がどこにあるのか疑問ですね。

 福田 中身を理解した人は皆んな大反対ですよ、反対意見はすさまじい。会場で怒号が飛び交うほどでも市当局は全く動じませんよ。指導二課が入ったのもPTAが反対しているのを抑えようとしてだと思う。本当にね、(市は)賢い人が集まっているところとは思えません。普通に考えればこんなものいらない、あってはいけないと分かる。私はいつも泣きそうになって帰るんですよ。なんでわからないのって。

 渡辺 条例制定は、ある団体が市の特別委員会にもちかけたのが最初だそうです。市議会には教育に詳しい議員や条例に問題意識を持っている議員もいますが、大多数の議員さんは最初「何だかさっぱりわからん」と。しかし最近では皆さん、よく勉強して下さっているようです。

社会適応できるのか

 福田 適応障害の患者さんが今とてもたくさんいて、それも二十代から四十代前半っていう若い人にとても多い。看護師として関わっている友達に子どもの権利に関する条例のことを話すと、これ以上子ども達に権利を主張させ、権利を盾にして育った子供が十八才になったとする。果たして社会に適応できる大人になっているか、自分はそうは思わない。子供達は弱くなってしまうんじゃないか。そういう条例は「あってはならない」と。

 ―権利条例の下で育った子供が将来会社に入り、企業人として社会を担っていけるのか、企業はどう考えるでしょう。それでなくとも近年、企業が若年層社員への対応に苦労しているという話はよく聞きます。

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その2

驚くべき他都市の事例

 渡辺 二十年の確か夏だったと思うんですが偶然、中学校校長会の会長でもある校長先生にお目にかかり「広島市は子ども権利条例を制定しようとしていますが」と申し上げると校長先生は「何ですか、その話は存じません」。当事者となるであろう校長会の会長さんがご存じない。現場で携わる方の耳にこの話が入っていないことに、市民としてまた親としても疑問と不安感を持ちました。
 さて小中高でのいじめを含む校内暴力について一昨年、昨年と十一月に全国調査の統計を文部科学省が発表しています。暴力問題が全くないという学校が五割を切った。今やもう五割以上の学校で校内暴力やいじめなどの問題がある。そして年々低年齢化し増加の一途を辿っている。その要因としては、①感情のコントロールができないこと、②規範意識や道徳心の低下、自分の感情をコントロールできないことから、③他者とのコミュニケーション能力の低下。この三つが挙げられていました。この現状認識の上で、国連でいう「児童の権利に関する条約」の意味するところを考えてみましょう。発展途上国での命にかかわる強制労働、人身売買など劣悪な環境改善を主たる目的として国連の条約は制定されています。これだけ平和な日本でもそういう子供が片隅にいるかもしれない。だから批准をしたと私は理解していた。ところが自治体で制定された条例により、先生が生徒を叱って座らせたことで権利侵害として訴えられるとか、ほかにも同様の事例がありましたね。

 橋本 兵庫県の川西市で子供が騒いでの授業妨害、これが連日で授業ができない。そこで別教室に連れて行って個別指導をする。そうしたところ生徒がオンブズパーソンに訴え、担任も校長も市の教育委員会も謝罪するという事態になった。権利侵害だと言うことでね。それを聞いた時にね、これは教育現場は大混乱をきたすと思いました。子供の権利を条例化し、監視体制を第三者機関に委ねるということになった時、オンブズパーソンですかね。その輩(やから)、輩といっちゃぁいけないが(笑)、その人達が権力を行使することになると思うんですね。
 広島の教育改革は平成十年ぐらいから火が点いてきて、私も当事者でかなり関わりましたが(県内教育現場の崩壊が全国に知られ、国から異例の是正指導を受けた)、結局あれは対組合とは言っているけれども、組合以外の第三者も動いていたわけですよ。子どもの権利条例でもオンブズパーソンの機関など設ければ、関与する人間によっては十年前に戻るのではないか、それを恐れているのが率直な気持ちです。

 渡辺 保育士の福田さんは、一人の子供が突出した行動を取った場合、状況に応じた教育的配慮で、別室指導とか個別指導をなさるんですか。

 福田 もちろんあります(笑)。

 渡辺 当然その子に適切な指導をしなければいけませんね。それから学力が不足ならその子だけに別の宿題を出すとか。当たり前のことで、これは教育の一環だと思っておりました。ところが、条例化した川崎市や川西市で大問題になったという事例を聞いて、手も足も出せなくなってしまった現場の先生方がどうお考えなのかと思います。

 福田 保護者って結構恐いんですよ。本当に。保育員でも大丈夫じゃない。昼寝の時に寝ないで騒いでいる子がいまして。最初は「今何の時間かな」って普通に言うんですけど、言えば言うほど調子に乗ってふざけるわけですね。「いい加減にしんちゃい」と怒って布団に入れたんですよ。まぁ子供なので、帰って親にあることないことを話す。すると親が怒鳴り込んでくるんですね、「私をなめんなよ」って言って(笑)。結局謝ることしかできない。

 渡辺 条例が通ると、第三者機関に調査されることになる。その第三者機関の委員自体をどうやって、誰を選出するのか、ここまで来たら考えてしまいますね。

改革から逆戻り?

 渡辺 また、こんな事例もあります。川崎市ではたとえば書道の優秀作品に金銀銅なんて付けて慶事することもできないんですね。金銀銅にならない子の権利侵害が発生する。

 橋本 そんなのばっかり。

 渡辺 小学校で絵日記の宿題を出しても、プライバシーの侵害だから書かないって言われたら、もうそれ以上言えませんよ、という話しもある。耳を疑うような話は枚挙にいとまがありませんよ。

 橋本 それはそっくりそのまま、今から十五年前の広島の教育界なんですよ。運動会で一緒に手を繋いでゴールしようという思想にまた逆戻りするだけですよ。

 渡辺 「子どもの権利条例」は、子供を大人の「保護の客体」から「権利行使の主体」に確実に変える、ここがポイントになっているんですね。
 高校の校長先生は条例化の話を聞いて「それは大変だ。広島の教育界は文科省から異例の是正指導を受けた大変な過去がある。当時は心ある人たちがモノを言えない状況だったが、その状態よりもっとひどく、後戻りしてしまうのではないか」と心配しています。

 橋本 平成二十年の夏頃から我々はもちろん一般の市民、保護者に火が点いてきたわけですよ。火が点くっていうのは、条例のことを知ってきたわけですね。私もこれを知って学校の校長のところに話しをしました。しかしほとんど知りませんでした、内容も何もですね。そして同年の八月、九月と市民有志の方々による会合や講演会がどんどん開かれだした。

 渡辺 どういった講演会でしたか。

 橋本 その時は「子どもの権利条例とは何ぞや」というような、両方の立場から見る講演会があったり、反対する立場の会もあったり、それぞれだったと思います。すると今度は市の未来局が各区で公聴会を開き始めました。PTAとか青少協とか民事協であるとか、そういった各団体に説明し始めたんですね。

 福田 最初、こども未来局からは、PTAには「説明する必要はない」というニュアンス、そういう言われ方だった。市PTA協議会として未来局と話すなかで「それはなだろう」と。

 渡辺 それは可笑しな話しですね。直接関わる市のPTAでしょう。

 福田 本当に子供達のことを思ってつくるなら、PTAの前できちんと説明をするべきだと申し入れて、ようやく各区で説明していただくことができたんですが、これもやっただけ、形式的で。

 渡辺 校長先生が何もご存知ない時点で、未来局はすでに条例をつくるための「意見を聞く会」(事実上の審議委員会)を開き、六回目位まで進んでいたんです(第一回は十九年十月、二十一年十月までに十二回開催)。意見を聞く会が五回も六回も終わった時点で、一番知らなければいけない中学校の校長会の会長が何も知らないとは…。

 橋本 それとね、二十年の確か十月だったと思うんですよ。私は青少協(青少年健全育成連絡協議会)の佐伯区の会長もやっていまして、条例について市青少協の会長である打越さんのところへ話しに行ったんですよ。私と前市P協会長である尾崎さん、市の「おやじの会」としては正副会長が行った。会長は私達が話すまで全く知らなかった。市の青少協の会長ですよ。聞いたその場で未来局の局長に電話して「どうなっとるんや」と、「何で我々が知らないうちにこんなことやっとるんや」と、怒りの電話ですよ。

 渡辺 私のように高等学校関係の者は、最初から反対の立場ではなかったんです。条例が制定されている他県の方をお招きし、賛否両論を壇上で討議していただいた。決して反対集会ではないんですよ。終了時のアンケート調査の結果、九割の方が反対とお書きになった。残りは慎重にならざるを得ない。賛成はたった一人だった。三百人の集まりです。これはもっと勉強しなければ、ということになったんです。
 私の記憶ですと確か、「意見を聴く会」に当時、二葉中学校の校長先生と山陽高校の先生が出席され、猛反対なさったんですね。ご自分の考えだけではなくて、他の校長先生とも話し合った結果、反対なさったと伺っています。それから保育園の園長さんなどに勉強のため個別にお話しを聞くと「これ、出来たら大変ですよ」、反対が圧倒的大多数だったんですね。
 にもかかわらず、大変驚いた事実があります。これは周知のことですが、平成二十一年十一月二十日、教育委員会の指導二科が市立の幼少中高の管理職二百数十名に招集をかけて、一日に二回に分けて研修会をやっているんです。それも川崎市で条例をつくった理事長を招いて講演させた。その資料を見せていただきましたが、これはもう条例制定後に、
学校でどう運用したら良いかっていうような内容ですよ。

 橋本 なるほどね。教育委員会指導二課が校長先生達に招集をかけたってことはいわば命令です。条例案を通そうとする中で、そこ(管理職)を抑えにかかたってことですよ。

 福田 意見を聴く会の尾崎さん(前市P協会長)も反対の立場のようですが「良いものをつくるために広島市は努力している」ということであれば、制定した他都市の良い事例を挙げてみてくれと、お願いを何度もしているようですが。

 橋本 それが出て来ないんですよね。

 福田 私たちも何回も言いましたよね。未来局さんに。

 橋本 ある市民の会が二十年五月に市のこども未来局に行きまして、公開討論会の申し入れをしたんです。反対賛成を言い合っても仕方ないから公開討論会をやろうと。その時には未来局の現自嘲と現課長が「それは良いことだ。やりましょう」、「日時も決めていきましょう。どなたを出すかも決めていきましょう」。それから一週間後ぐらいに「実はできないことになった」と。何故かと聞いても明確な答えはなし。たぶん上から「止めろ」と言われたんだと思います。推進する側の意見と反対する側の意見をそこでぶつければ良いんですよね。それを皆さんに知ってもらう、聞いてもらう、見てもらう。しかしうまく逃げられちゃったという状態ですよね。

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その1

 広島市は「こどもの権利に関する条例(仮称)」の制定に取り組んでいる。平成十九年十月、学識経験者などで構成する「意見を聴く会(審議委員会)」を設置、以来十四回にわたり条例の内容について検討、平成二十年八月に「骨子(試案)」を発表、平成二十一年十二月には試案から改良を重ねた「素案」を公表した。市が「条例」制定に動き出して以降、多くの市民団体や保護者団体などが勉強会や討論会、あるいは有識者を招いての講演会を実施。その結果、子供の育成に関わる団体の大多数から「条例制定反対」の声が上がっている。子供を守るはずの条例になぜこれほど反対の声が強いのか。本紙は前広島市PTA協議会母親委員会委員長・福田孝子さん、広島市おやじの会連絡会会長・橋本英樹さんをお招きし、元全国高等学校PTA連合会会長・渡辺綾子さんにコーディネーターをお務めいただき、おふた方の意見を伺った。なお広島市はこの二月定例市会への条例提案を視野に、一月十五日まで市民意見を募集中である(二十一年十二月中旬収録、聞き手=本紙・倉林)

水面下で進んだ準備

 渡辺 本日は広島市が今、条例化しようとしている「子どもの権利条例」の制定についてお二人にお話しを伺います。私が初めてこの話を耳にしたのは確か平成十九年の初めごろだったと思います。他県の方から「広島市は子どもの権利条例制定を進めているようだけれど、大変面白いことをするのね」という電話を頂いた。私は、国連で採択され日本が平成六年に批准している「児童の権利に関する条約」に関連するものかなと思いました。この条約は発展途上国の恵まれない子供の人権環境を改善する主旨のものです。ところがどうもそんな話ではない。その方とお孫さんが暮らす自治体には、すでに子供の権利条例が制定されており「面白いこと」というのは実は皮肉で「おかしなことをするのね」というイメージでお話しがあったのです。
 それから私もこの条例について調べ始めましたが、橋本さんは広島市が準備を始めていることをいつお知りになりましたか。

 橋本 私が利いたのは二十年の六月頃です。広島市が動き出してから一年以上経って、私の耳に入ったことになります。子どもの権利条例は、いわゆる国連の児童の権利条約からきているという話しでしたが、色々私なりに勉強させていただくと、どうも広島市の条例は中身が違うようだ。「おやじ」仲間でも論議しました。子供を育てる中で「しつけ」という言葉をよく使うと思うんですけれども、それに対して、いったいこの条例はどうなるんや、というのが率直な反応ですよ。

 渡辺 いま「しつけ」という言葉が出ましたが、未成熟だから教え、しつけ育てる。子供は大人の「保護の客体」であるということです。いじめ問題などに関わっている方は「子どもの権利条例」制定は、虐待やいじめ防止のツールの一つになるのだろう」と理解しておられるようです。私も初めはそう思っていました。しかし調べてみると、平成十二年に川崎市で条例が制定されたのを皮切りに、各地で制定された同様の条例では「ありのままの自分でいること」「自分の考えや信仰を持つこと」「秘密を持つこと」「遊ぶこと」「安心できる場所で自分を休ませ余暇を持つこと」等々「自分に関することは自分で決める」などが保障されています。

 橋本 そして第三者のオンブズパーソンによる監視機関をつくっている。こういう例を聞いた。川崎市で子供が授業中に立ち歩いたりすることを長期間続け、担任の教師は毎度のように大きな声で注意していた。ある時、腕をつかんで「椅子にきちんと座りなさい」と大きな声を出して座らせた。するとその後、親御さんが「うちの子供は腕をきつく持たれみんなの前で大声で叱られ恥ずかしい思いをした。これは権利侵害にあたる。この市では子どもの権利条例が制定されているにも拘わらず、どうして子供の権利侵害をするのだ」と訴えた。結局は担任の教師だけでなく校長、そして教育委員会までも謝罪させられたと聞きました。
 教師の行動は教育の一環でしょう。それを謝罪させるなどということがまかり通れば教育は成り立たない。「どうなってんだ、こりゃ」ですね(笑)

 渡辺 保育士で主任児童民生委員をしておられる福田さんは、この話をいつ耳にされて、どういうご意見をお持ちですか。

 福田 最初に聞いたのはいつ頃でしたか、ある会合で「こんなものつくろうとしているよ」と聞きましたが、その時は正直何も考えず「へぇ」と思って聞いていました。一般の親ってそんなものだと思うんですね。そして二十年の夏ぐらいだったと思うんですが、市のPTA母親委員長の立場で、市P協(広島市PTA協議会)の役員さんと一緒に市教育委員会へ行きました。そこで初めて骨子・試案を見せられ、他の自治体の条例も分厚い資料をいただいて説明を受けた。親は「個どものため」っていう言葉には正直弱い。子供のため、子供のためと連呼され「あぁ、それは良いものかもしれない」という意識で話を聞きました。私は保育園でも朝食抜きや母親に感情的に扱われる園児がいることを承知していますが、話を聞き終えると「いやぁ、いらんじゃろう」って思いました。
 虐待・いじめ等から子供達を守っていく条例は他にある。虐待防止条例であったり、青少年健全育成条例であったり、また色々な機関が活動し、頑張って助けようとしている。そしてほとんどの親は様々な問題に直面しながらも懸命に子育てをしていて、子供達も一生懸命生きてます。そこにこの条例を持ってこられたら「一体どうなるの」と思ったのが第一印象です。それをぶつけながら考えながら、これまでみんなと話し合いをしてきました。

2010/01/29

日刊廣島より、日教組が礼賛の「子供条例」問題が指摘

学力テストは骨抜き、教員の免許更新は廃止の方向。新政権になって教育政策が大きく変容しつつある。広島県は過去、教職員組合の影響力による指導要領を逸脱した指導、授業が大問題となり平成十年、文部省から異例の是正指導を受けた。以降「公教育再生」を掲げてきた広島県だが、新政権の教育政策はどう影響するのか。また今後の公教育の在り方は。広島市立高校などの校長を経て、現在県議を務める中村道徳さんに聞いた。(文中敬称略、聞き手=倉林)

―自民党は安部政権時に改正教育基本法案を通し、教育の改革を積極的に進めてきました。昨年政権交代しての民主党政権下、教育政策をどうみていますか。

中村 これはねぇ、大変なことになるんじゃないかなと思いましたねぇ。国の文部行政の後退を感じる。児童生徒の学力は世界的にも随分下がってきている。それをようやくここまで持ってきた。ところがまた今、課題に対して正面から対処していないように感じます。

―道徳の補助教材も廃止される方向のようですが。

中村 心のノートですね(心のノート=全国の小中学生全員を対象に文部省が作成し無償配布している道徳教育の補助教材。民主党を支持する日教組は道徳教育について「内心の自由を侵す」などと反対の姿勢をとってきた)。小学校では二十三年からはじまる新しい学習指導要領(全面改定)でも、心の教育である道徳を重視している。学校の先生が教えていくためのその柱、拠り所となる資料を取り上げることになる。経費削減か何か知りませんが。同じく二十三年からはじまる英語課(小学校五、六年)の副読本もです。
 広島市はこの英語課程を先取りして今年から始めます。先生の研修も済ませている、担任の先生が授業することになっています。他の自治体はどう対処するのか、県はどうするのか。副読本も作らなければいけない。市町の教委で作るのか、県が作るのか。国の文部行政が揺れ動く中、道徳教育とともに新たな課題として浮上しています。研修も必要ですが研修費も削減されています。いま、新たな教育内容への対応が求められているところです。

―子供の道徳観は変化していると思いますか。

中村 変わってきましたね。それはモノが豊かになったことが大きな要因でしょう。公徳心とか奉仕の心とか、礼儀とか、物を大切にする気持とか(薄れている)。日本の道徳というのは明治学制発布以来、きちんと教えるべきことを教えてきた。昔は掛け図で教えていたんですね。それが戦後、そういう教育ができなくなってきた。しかし根っこのところで大事なのは、人として大事にする、いじめない、みんなで支える。これは日本人として、いや人として生きる基本だと思う。物が豊かになり、自分だけがよければいい、金があればいいなどという風潮になってきた。
 かつて東京と広島は高等師範学校を有し、伝統ある素晴らしい日本の教育を支えていた。その広島が十年前、こんなことになってしまった(文部省による是正指導)。
 いま一番大事なことはよい先生、力量のある先生を増やすことです。先生の仕事というのはね、さじ加減で子供が変わるわけですからね。先生によって勉強を一生懸命にやりだしたりもする。教室できちんと座って授業を受けられるかどうかも先生の力。その先生を指導していくのは校長であり行政。管理職、教育委員会のスタッフはまさに優れていなければいけない。広島県は随分良くなりました。

―是正指導前には校長の意向を現場が無視するような深刻な事態があったようですが。

中村 県内、広島市でもありましたし、私も経験しました。また全国的にもありました。ただ、その頃は管理職と先生方が本気で、場合によっては地域も巻き込んで議論し、一生懸命にやっていました。国旗・国歌もやりましたよ。管理職は苦しんだけれども頑張っていた。いまは、管理職が簡単にトップダウンで進められるようになったが、それでいいのかな、と思う部分もあります。変な管理職が増えてパワハラが発生しているという報告もある。生徒も先生も「これだけやったら出来た、自分はやれるんだ」という自己肯定感を感じ、誇り、自信を持てるようになれば不祥事なんて起こらないんですが。

―私が中学生の当時は先生によく殴られていましたが、尊敬できる立派な先生でした。いまは体罰が絶対禁止なのはもちろん、厳しい指導はやりにくい。先生方が萎縮している部分はありませんか。

中村 何か言えば保護者から責められる。モンスターペアレントね。ただしね、先生が生徒に情熱を注いだならば、生徒も親も絶対についてきますね。普通の公務員と違うのはそこですよ。教育公務員というのは優れた教育愛と優れた指導力が必要。一般の公務員は仕事の力量が優れていればいい。教育公務員は教育的情熱を持ち、子供にしっかりと自己肯定感を味わわせ、自分も誇りを持てるようになれば、保護者にもしっかり対応できる。それをフォローするのが行政の仕事。

―モンスターペアレントには現場の先生方も対処が難しいでしょう。

中村 私の在任中もありましたよ。夏休み明けに金髪、茶髪で登校した生徒を家に帰した。すると四人の保護者が校長室に来られた。しかしそこは私の信念ですから。私が全責任を負う。学校に来ていただかなくても結構だと。まぁ、高等学校だからできたんでしょうけれどね。いまは中学校でも、集団行動がとれない生徒は自宅待機させることが出来るようになりました。
 優れた管理職には信念、方針というのを持たせてやらないと、何でもかんでも教育委員会の言うとおりによやれ、というのではいけない。教育委員会は支える役目。
 私は、公立も私立のような運営、経営をやれば素晴らしく変わると思う。私学にはそれぞれ建学の精神がある。独立法人制のような形をとれば、知恵がたくさん出ると思う。

―それは頑張らざるを得ないですね。

中村 公立高校は教育委員会の方針を守らなければならない立場が一方ではある。その教育委員会制度も見直しが議論されている。現場にある程度の裁量を与え、新しい教育をつくっていくことも考えなければならない。

―本当に優れた管理職が一定の裁量を与えられるならばおっしゃる通りすばらしいが、自由を与えれば良からぬ分子の入り込む危険が教育界には常にありますね。

中村 公立は特にそうですし、私にも経験があります。組合交渉を夜中の一時、二時までやったこともあります。私は基本的に、組合は教育内容の中身に対して介入すべきではないと思う。国旗・国歌は教育内容の中身だが、それに介入してきた。道徳の時間が人権や同和教育の時間に勝手に変わっていたとかいうのもそれ。組合というのは労使の勤務の在り方、生存権や給与の問題を交渉するべきものだと思う。

子どもの権利条例

中村 いま広島市では「子どもの権利に関する条例」制定が進められていますね。私は反対です。

―条例が出来れば、金髪の生徒を家に帰すことはできないでしょうね。

中村 それはできないでしょうね。昨年二月に広島で開かれた日教組大会の資料を見て私は唖然としました。国語が「日本語」と表記されている。道徳教育については部会も何もない。そして人権教育の指針に「子供の権利条約」が掲げられ、これが各地で推進されている権利条例に繋がっている。


―子どもの権利条例が出来れば組合員である現場の先生方も困るのではありませんか。

中村 困る先生もいらっしゃるでしょう。しかし、生徒が「この制服はいやだ」といえば「私もそう思うから校長に言いなさい」という先生も安価にはいらっしゃるわけです。一番困るのは管理職でしょうね。民主政権になってこのあたりがどうなっていくのか。大きな懸念のひとつですね。
 いまの教育課程は先生方の志気をどう高めていくか、学校の経営体質をいかにしっかりさせるかが重要です。生徒については少子化の時代でもあり、汗をかくことも学ばせたい。私の育った当時は、土を耕したりということが授業の中でもありました。学力も必要ですが、汗を流し、困難に耐え、勤労意欲を持たせる教育が大事だと思いますよ。

2010/01/18

「子供のためという詭弁」 日本時事評論記事よりH22.1.15

 「子どもの権利の保障を進め、子どもにやさしいまちづくりを推進したい」―来月にも子供の権利条例を市議会に提案しようとしている広島市当局の語り口だが、甘美な言葉ほど気をつけなければいけないのは世の常である。この権利条例の反対に立ち上がった有志の女性も、その条例に隠れた意図を知ったのが動機だった。条例推進側の会合で、教職員と同和団体と思しき人物の”本音”の密談(?)をロビーでたまたま耳にしたからだ。

要約すると、人権を掲げる左翼団体が条例を制定したい意図は、一つは、条例が制定されれば、旧社会党系の現市長が入れ替わっても、子供のための施策という名目で予算、つまり活動資金が確保できること。二つ目に、行政活動の監視・告発をする「オンブズマン」として同和関係者を送り込んで、都合のよい人権思想を広めたり、学校等に介入できるようになること。三つ目に、それらによって学校が荒れれば、教職員の削減が難しくなり、雇用の確保が可能になること。四つ目に、子供も大人と対等ということになれば教育に関するいろんな問題も、教職員が責任回避できること。五つ目に、権利の主張は当然、最終的には裁判で争うことになるので、弁護士も儲かること。

常識的な市民からすれば耳を疑うようなことばかりだが、条例制定を進めようとしている構成メンバーを考えれば腑に落ちることばかり。子供のためと言いながら、一部の大人たちの権益を確保しようとする構図が見えて、いてもたってもいられず仲間と反対署名集めを始めたという経緯がある。

同様な条例を制定している川崎市では、授業妨害を繰り返していた生徒らに学校側が別室指導したことが人権侵害だとして、救済申し立て事件に発展している。これでは教師の指導はもちろん、親のしつけも成り立たず、子供の健全育成など望むべくもない。そもそも「子ども」と意図的に交ぜ書き表記することで、いかにも子供に理解があるように装うことこそ偽善的だと察知すべきであると言えよう。