2010/02/04

広島市PTA協議会が、「広島市子ども条例」の制定に反対の声明を発表!広島市に要望書を提出!!

広島市の小中学校に通う子供達の保護者と教師の会である広島市PTA協議会が、2月2日、広島市役所を訪れ、広島市が制定をめざす「子ども条例」に、反対の声明を出し、広島市に要望書を提出しました。


ぜひとも激励の声を届けましょう!!

広島市PTA協議会  会長代行  谷村敏彦
 
FAX 082-242-7196
TEL 082-242-7195

ホームページ(要望書あり)

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NHKオンラインニュース(2010年2月2日)

広島市が制定を目指している「子ども条例」について、広島市内の小中学校のPTAが「必要性が理解できない」などとして、2日、条例の制定に反対する声明文を広島市に提出しました。


広島市は、子どもがいじめや虐待を受けることのない安全な環境のもとで、生きる権利があることなどを盛り込んだ「子ども条例」を今年度中に制定することを目指しています。


これについて、広島市内の小中学校に通う約9万6000人の児童と生徒の保護者などで作る「広島市PTA協議会」は、2日、広島市役所で記者会見し、「子ども条例」の制定に反対する声明文を、広島市に提出したことを明らかにしました。


声明文では、条例の制定に反対する理由について、その必要性が理解できないことや、権利の乱用により家庭や学校での子どもの指導に混乱が生じる懸念があることなどをあげています。


広島市PTA協議会の谷村敏彦会長代行は「いじめや虐待についても現在の法律で十分対応できる。条例を作るならPTAが100%賛成するものにすべきだ」と話しています。


広島市は、今回の声明文について「今後、適切に対応する」と話しています。


この条例の制定をめぐっては、ほかの市民グループも反対を訴える署名活動を行っているほか、市議会からも「効果があるのか疑問だ」などと必要性を問う声があがっています。



広島ホームテレビ

「広島市の子ども条例に、広島市PTA協議会が反対」



広島市が進めている「子ども条例」について広島市のPTA協議会は「条例は必要はない」「乱用が心配」として制定に反対を表明し意見書を広島市に提出しました。広島市の条例案では子どもが権利を侵されたときの駆け込み寺として「擁護委員会」を設置して権利を侵害した者から事情を聞くことができるなどとしています。PTA連合会の谷村代表代行は「虐待もいじめも現行の法律で対応できる。こちらに力を入れた方が良い」と話しています。意見書を提出したのは、広島市の小中学校に通う児童、生徒およそ9万6千人の保護者らでつくる広島市PTA協議会です。協議会は条例が必要ないことや条例が乱用され学校での指導ができなくなる恐れがあるなどとして制定に反対を表明し秋葉市長と藤田市議会議長に宛てた意見書を提出しました。谷村代表代行は「条例ができて権利が誇張された場合、本当にいい子が育つのか」と話しました。広島市は要望書について「適切に対応する」としていて、今年度中の制定を目指しています。

(02/02 18:52)


NNNニュース

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その4

教育現場への危惧

 福田 子供達は長時間学校で過ごしているので、学校現場の充実を考えてほしい。条例が出来ればモンスターペアレントに苦しむことになるんじゃないかと、学校に負担がかかることを心配する声がたくさん挙がっていました。

 渡辺 「子供達に規範意識、道徳心を持たせる公の精神を」と教育基本法が改正され、教育現場でのいじめや暴力行為に歯止めがかかると安心した矢先だけに残念です。もちろん家庭でのしつけが大事ですが、条例制定となると道徳心とか規範意識、公共の精神、規律など、とても教えにくくなるわけです。個別に指導したり、ダメだと教えることすら困難になってくる。国で掲げたことに対して整合性がないですよね。

 橋本 そんな状況で、市は子供達を集めて条例の話を聞かせてるんですよ。既成事実をもうつくっている。「二回説明会をして、それで子供達の理解を得たっていう表現になるわけですよ。バカバカしい。

 ―この条例が通れば、学校がどんな状態になっても先生の責任ではなくなりませんか。

 橋本 そう。

 福田 そう。

 渡辺 そうなんですよ。やる気のない、自分は教育労働者だと公言している先生は責任逃れ、教育者でありたいと願う、やる気のある先生は、指導したくても手も足も出なくてダルマ状態になる。困るのは管理職でしょうね。

 福田 一番困るのは親ですよ。

 渡辺 当事者の皆様が子供のことを考えて「とんでもない」「いらない」「あってはならない」と叫び続けています。
 最後に、子供に権利を保障する「自己決定権を認める」発想は一九六〇年のアメリカに広く見られたそうです。大人の決めた枠組みから子供を解放する「子ども解放運動」なるものが起こりその結果、青少年の精神的な荒廃、教育界の混乱が起きたそうです。学校から規則・規律が消えて暴力とセックスが横行するようになってしまった。
 子供の未熟な意見や判断に「権利」のお墨付きを与えることで家庭や教育現場が混乱することは容易に予測できます。多くの市民の皆様、市議会議員の皆様にご考察いただければと思います。
 未来を託す子供達のために矢面に立ってご活動いただくお二人に感謝申し上げます。本日はありがとうございました。

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その3

市の言い分

 橋本 こども未来局の話しや、市が各区のPTAを集めて説明する時に必ずおっしゃるのが「いじめがこれだけある、暴力がこれだけある、つらい思いをしている子どもがいる」という説明が主で、だから条例がいるんだとそればかり。我々が反対している理由の一つは、全体でゼロ歳児から十八歳までを権利だけで括って何を教えるのかということなんですね。
 虐待防止ならすでに虐待防止条例もある。色々あるけれど知らない方が多いわけですから。子供の権利を謳った子供の育成なんて有り得ないし、現実には、条例でイジメが無くなるわけではない。「いじめられたくない」と言っていじめられなくなる訳ではない。「殴られたくない」と言ってもケンカが収まる訳ではない。そんな訳はない。現実からは乖離している。現実論で、具体論で対処しないと、権利でくくっても実際には守れない。

 渡辺 いじめ、暴力は実際には増えている。いじめを本当になくそうと思えば「規範意識や道徳をこのように教えていくことになりました。市民の皆さん協力してください」と言えばいくらでも協力する。例えば「万引きはゲームじゃない」という県のキャンペーンは今でも広く店舗でアナウンスされています。

 橋本 喜んで協力しますよ。「子供はこの町の宝です」とか「いじめ、暴力は恥ずかしい行いです」とかね。

 渡辺 市民をあげてキャンペーンをすれば少しはいじめも改善するのではないでしょうか。

 橋本 ホントにね、なぜこんな条例をやろうとしているのか分からない。我々の税金を使ってね。

 渡辺 PTAが多くの反対意見を持ち込んでも公表もしていただけないし。

 橋本 市は市P協を説得しようとして、指導二課を通じてやっていますがいまのところ、はねつけているようです。今後もPTAは反対していくと思いますが。

 福田 いくら反対したってそれでもやるって言うんだから。

 橋本 我々市民がフォローしますよ。

 ―そんな状況でなぜごり押しするのか、説明もされないとなると、意図・真意がどこにあるのか疑問ですね。

 福田 中身を理解した人は皆んな大反対ですよ、反対意見はすさまじい。会場で怒号が飛び交うほどでも市当局は全く動じませんよ。指導二課が入ったのもPTAが反対しているのを抑えようとしてだと思う。本当にね、(市は)賢い人が集まっているところとは思えません。普通に考えればこんなものいらない、あってはいけないと分かる。私はいつも泣きそうになって帰るんですよ。なんでわからないのって。

 渡辺 条例制定は、ある団体が市の特別委員会にもちかけたのが最初だそうです。市議会には教育に詳しい議員や条例に問題意識を持っている議員もいますが、大多数の議員さんは最初「何だかさっぱりわからん」と。しかし最近では皆さん、よく勉強して下さっているようです。

社会適応できるのか

 福田 適応障害の患者さんが今とてもたくさんいて、それも二十代から四十代前半っていう若い人にとても多い。看護師として関わっている友達に子どもの権利に関する条例のことを話すと、これ以上子ども達に権利を主張させ、権利を盾にして育った子供が十八才になったとする。果たして社会に適応できる大人になっているか、自分はそうは思わない。子供達は弱くなってしまうんじゃないか。そういう条例は「あってはならない」と。

 ―権利条例の下で育った子供が将来会社に入り、企業人として社会を担っていけるのか、企業はどう考えるでしょう。それでなくとも近年、企業が若年層社員への対応に苦労しているという話はよく聞きます。

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その2

驚くべき他都市の事例

 渡辺 二十年の確か夏だったと思うんですが偶然、中学校校長会の会長でもある校長先生にお目にかかり「広島市は子ども権利条例を制定しようとしていますが」と申し上げると校長先生は「何ですか、その話は存じません」。当事者となるであろう校長会の会長さんがご存じない。現場で携わる方の耳にこの話が入っていないことに、市民としてまた親としても疑問と不安感を持ちました。
 さて小中高でのいじめを含む校内暴力について一昨年、昨年と十一月に全国調査の統計を文部科学省が発表しています。暴力問題が全くないという学校が五割を切った。今やもう五割以上の学校で校内暴力やいじめなどの問題がある。そして年々低年齢化し増加の一途を辿っている。その要因としては、①感情のコントロールができないこと、②規範意識や道徳心の低下、自分の感情をコントロールできないことから、③他者とのコミュニケーション能力の低下。この三つが挙げられていました。この現状認識の上で、国連でいう「児童の権利に関する条約」の意味するところを考えてみましょう。発展途上国での命にかかわる強制労働、人身売買など劣悪な環境改善を主たる目的として国連の条約は制定されています。これだけ平和な日本でもそういう子供が片隅にいるかもしれない。だから批准をしたと私は理解していた。ところが自治体で制定された条例により、先生が生徒を叱って座らせたことで権利侵害として訴えられるとか、ほかにも同様の事例がありましたね。

 橋本 兵庫県の川西市で子供が騒いでの授業妨害、これが連日で授業ができない。そこで別教室に連れて行って個別指導をする。そうしたところ生徒がオンブズパーソンに訴え、担任も校長も市の教育委員会も謝罪するという事態になった。権利侵害だと言うことでね。それを聞いた時にね、これは教育現場は大混乱をきたすと思いました。子供の権利を条例化し、監視体制を第三者機関に委ねるということになった時、オンブズパーソンですかね。その輩(やから)、輩といっちゃぁいけないが(笑)、その人達が権力を行使することになると思うんですね。
 広島の教育改革は平成十年ぐらいから火が点いてきて、私も当事者でかなり関わりましたが(県内教育現場の崩壊が全国に知られ、国から異例の是正指導を受けた)、結局あれは対組合とは言っているけれども、組合以外の第三者も動いていたわけですよ。子どもの権利条例でもオンブズパーソンの機関など設ければ、関与する人間によっては十年前に戻るのではないか、それを恐れているのが率直な気持ちです。

 渡辺 保育士の福田さんは、一人の子供が突出した行動を取った場合、状況に応じた教育的配慮で、別室指導とか個別指導をなさるんですか。

 福田 もちろんあります(笑)。

 渡辺 当然その子に適切な指導をしなければいけませんね。それから学力が不足ならその子だけに別の宿題を出すとか。当たり前のことで、これは教育の一環だと思っておりました。ところが、条例化した川崎市や川西市で大問題になったという事例を聞いて、手も足も出せなくなってしまった現場の先生方がどうお考えなのかと思います。

 福田 保護者って結構恐いんですよ。本当に。保育員でも大丈夫じゃない。昼寝の時に寝ないで騒いでいる子がいまして。最初は「今何の時間かな」って普通に言うんですけど、言えば言うほど調子に乗ってふざけるわけですね。「いい加減にしんちゃい」と怒って布団に入れたんですよ。まぁ子供なので、帰って親にあることないことを話す。すると親が怒鳴り込んでくるんですね、「私をなめんなよ」って言って(笑)。結局謝ることしかできない。

 渡辺 条例が通ると、第三者機関に調査されることになる。その第三者機関の委員自体をどうやって、誰を選出するのか、ここまで来たら考えてしまいますね。

改革から逆戻り?

 渡辺 また、こんな事例もあります。川崎市ではたとえば書道の優秀作品に金銀銅なんて付けて慶事することもできないんですね。金銀銅にならない子の権利侵害が発生する。

 橋本 そんなのばっかり。

 渡辺 小学校で絵日記の宿題を出しても、プライバシーの侵害だから書かないって言われたら、もうそれ以上言えませんよ、という話しもある。耳を疑うような話は枚挙にいとまがありませんよ。

 橋本 それはそっくりそのまま、今から十五年前の広島の教育界なんですよ。運動会で一緒に手を繋いでゴールしようという思想にまた逆戻りするだけですよ。

 渡辺 「子どもの権利条例」は、子供を大人の「保護の客体」から「権利行使の主体」に確実に変える、ここがポイントになっているんですね。
 高校の校長先生は条例化の話を聞いて「それは大変だ。広島の教育界は文科省から異例の是正指導を受けた大変な過去がある。当時は心ある人たちがモノを言えない状況だったが、その状態よりもっとひどく、後戻りしてしまうのではないか」と心配しています。

 橋本 平成二十年の夏頃から我々はもちろん一般の市民、保護者に火が点いてきたわけですよ。火が点くっていうのは、条例のことを知ってきたわけですね。私もこれを知って学校の校長のところに話しをしました。しかしほとんど知りませんでした、内容も何もですね。そして同年の八月、九月と市民有志の方々による会合や講演会がどんどん開かれだした。

 渡辺 どういった講演会でしたか。

 橋本 その時は「子どもの権利条例とは何ぞや」というような、両方の立場から見る講演会があったり、反対する立場の会もあったり、それぞれだったと思います。すると今度は市の未来局が各区で公聴会を開き始めました。PTAとか青少協とか民事協であるとか、そういった各団体に説明し始めたんですね。

 福田 最初、こども未来局からは、PTAには「説明する必要はない」というニュアンス、そういう言われ方だった。市PTA協議会として未来局と話すなかで「それはなだろう」と。

 渡辺 それは可笑しな話しですね。直接関わる市のPTAでしょう。

 福田 本当に子供達のことを思ってつくるなら、PTAの前できちんと説明をするべきだと申し入れて、ようやく各区で説明していただくことができたんですが、これもやっただけ、形式的で。

 渡辺 校長先生が何もご存知ない時点で、未来局はすでに条例をつくるための「意見を聞く会」(事実上の審議委員会)を開き、六回目位まで進んでいたんです(第一回は十九年十月、二十一年十月までに十二回開催)。意見を聞く会が五回も六回も終わった時点で、一番知らなければいけない中学校の校長会の会長が何も知らないとは…。

 橋本 それとね、二十年の確か十月だったと思うんですよ。私は青少協(青少年健全育成連絡協議会)の佐伯区の会長もやっていまして、条例について市青少協の会長である打越さんのところへ話しに行ったんですよ。私と前市P協会長である尾崎さん、市の「おやじの会」としては正副会長が行った。会長は私達が話すまで全く知らなかった。市の青少協の会長ですよ。聞いたその場で未来局の局長に電話して「どうなっとるんや」と、「何で我々が知らないうちにこんなことやっとるんや」と、怒りの電話ですよ。

 渡辺 私のように高等学校関係の者は、最初から反対の立場ではなかったんです。条例が制定されている他県の方をお招きし、賛否両論を壇上で討議していただいた。決して反対集会ではないんですよ。終了時のアンケート調査の結果、九割の方が反対とお書きになった。残りは慎重にならざるを得ない。賛成はたった一人だった。三百人の集まりです。これはもっと勉強しなければ、ということになったんです。
 私の記憶ですと確か、「意見を聴く会」に当時、二葉中学校の校長先生と山陽高校の先生が出席され、猛反対なさったんですね。ご自分の考えだけではなくて、他の校長先生とも話し合った結果、反対なさったと伺っています。それから保育園の園長さんなどに勉強のため個別にお話しを聞くと「これ、出来たら大変ですよ」、反対が圧倒的大多数だったんですね。
 にもかかわらず、大変驚いた事実があります。これは周知のことですが、平成二十一年十一月二十日、教育委員会の指導二科が市立の幼少中高の管理職二百数十名に招集をかけて、一日に二回に分けて研修会をやっているんです。それも川崎市で条例をつくった理事長を招いて講演させた。その資料を見せていただきましたが、これはもう条例制定後に、
学校でどう運用したら良いかっていうような内容ですよ。

 橋本 なるほどね。教育委員会指導二課が校長先生達に招集をかけたってことはいわば命令です。条例案を通そうとする中で、そこ(管理職)を抑えにかかたってことですよ。

 福田 意見を聴く会の尾崎さん(前市P協会長)も反対の立場のようですが「良いものをつくるために広島市は努力している」ということであれば、制定した他都市の良い事例を挙げてみてくれと、お願いを何度もしているようですが。

 橋本 それが出て来ないんですよね。

 福田 私たちも何回も言いましたよね。未来局さんに。

 橋本 ある市民の会が二十年五月に市のこども未来局に行きまして、公開討論会の申し入れをしたんです。反対賛成を言い合っても仕方ないから公開討論会をやろうと。その時には未来局の現自嘲と現課長が「それは良いことだ。やりましょう」、「日時も決めていきましょう。どなたを出すかも決めていきましょう」。それから一週間後ぐらいに「実はできないことになった」と。何故かと聞いても明確な答えはなし。たぶん上から「止めろ」と言われたんだと思います。推進する側の意見と反対する側の意見をそこでぶつければ良いんですよね。それを皆さんに知ってもらう、聞いてもらう、見てもらう。しかしうまく逃げられちゃったという状態ですよね。

日刊廣島 平成22年1月1日号より 「あってはならない!」広島市・子どもの権利に関する条例  その1

 広島市は「こどもの権利に関する条例(仮称)」の制定に取り組んでいる。平成十九年十月、学識経験者などで構成する「意見を聴く会(審議委員会)」を設置、以来十四回にわたり条例の内容について検討、平成二十年八月に「骨子(試案)」を発表、平成二十一年十二月には試案から改良を重ねた「素案」を公表した。市が「条例」制定に動き出して以降、多くの市民団体や保護者団体などが勉強会や討論会、あるいは有識者を招いての講演会を実施。その結果、子供の育成に関わる団体の大多数から「条例制定反対」の声が上がっている。子供を守るはずの条例になぜこれほど反対の声が強いのか。本紙は前広島市PTA協議会母親委員会委員長・福田孝子さん、広島市おやじの会連絡会会長・橋本英樹さんをお招きし、元全国高等学校PTA連合会会長・渡辺綾子さんにコーディネーターをお務めいただき、おふた方の意見を伺った。なお広島市はこの二月定例市会への条例提案を視野に、一月十五日まで市民意見を募集中である(二十一年十二月中旬収録、聞き手=本紙・倉林)

水面下で進んだ準備

 渡辺 本日は広島市が今、条例化しようとしている「子どもの権利条例」の制定についてお二人にお話しを伺います。私が初めてこの話を耳にしたのは確か平成十九年の初めごろだったと思います。他県の方から「広島市は子どもの権利条例制定を進めているようだけれど、大変面白いことをするのね」という電話を頂いた。私は、国連で採択され日本が平成六年に批准している「児童の権利に関する条約」に関連するものかなと思いました。この条約は発展途上国の恵まれない子供の人権環境を改善する主旨のものです。ところがどうもそんな話ではない。その方とお孫さんが暮らす自治体には、すでに子供の権利条例が制定されており「面白いこと」というのは実は皮肉で「おかしなことをするのね」というイメージでお話しがあったのです。
 それから私もこの条例について調べ始めましたが、橋本さんは広島市が準備を始めていることをいつお知りになりましたか。

 橋本 私が利いたのは二十年の六月頃です。広島市が動き出してから一年以上経って、私の耳に入ったことになります。子どもの権利条例は、いわゆる国連の児童の権利条約からきているという話しでしたが、色々私なりに勉強させていただくと、どうも広島市の条例は中身が違うようだ。「おやじ」仲間でも論議しました。子供を育てる中で「しつけ」という言葉をよく使うと思うんですけれども、それに対して、いったいこの条例はどうなるんや、というのが率直な反応ですよ。

 渡辺 いま「しつけ」という言葉が出ましたが、未成熟だから教え、しつけ育てる。子供は大人の「保護の客体」であるということです。いじめ問題などに関わっている方は「子どもの権利条例」制定は、虐待やいじめ防止のツールの一つになるのだろう」と理解しておられるようです。私も初めはそう思っていました。しかし調べてみると、平成十二年に川崎市で条例が制定されたのを皮切りに、各地で制定された同様の条例では「ありのままの自分でいること」「自分の考えや信仰を持つこと」「秘密を持つこと」「遊ぶこと」「安心できる場所で自分を休ませ余暇を持つこと」等々「自分に関することは自分で決める」などが保障されています。

 橋本 そして第三者のオンブズパーソンによる監視機関をつくっている。こういう例を聞いた。川崎市で子供が授業中に立ち歩いたりすることを長期間続け、担任の教師は毎度のように大きな声で注意していた。ある時、腕をつかんで「椅子にきちんと座りなさい」と大きな声を出して座らせた。するとその後、親御さんが「うちの子供は腕をきつく持たれみんなの前で大声で叱られ恥ずかしい思いをした。これは権利侵害にあたる。この市では子どもの権利条例が制定されているにも拘わらず、どうして子供の権利侵害をするのだ」と訴えた。結局は担任の教師だけでなく校長、そして教育委員会までも謝罪させられたと聞きました。
 教師の行動は教育の一環でしょう。それを謝罪させるなどということがまかり通れば教育は成り立たない。「どうなってんだ、こりゃ」ですね(笑)

 渡辺 保育士で主任児童民生委員をしておられる福田さんは、この話をいつ耳にされて、どういうご意見をお持ちですか。

 福田 最初に聞いたのはいつ頃でしたか、ある会合で「こんなものつくろうとしているよ」と聞きましたが、その時は正直何も考えず「へぇ」と思って聞いていました。一般の親ってそんなものだと思うんですね。そして二十年の夏ぐらいだったと思うんですが、市のPTA母親委員長の立場で、市P協(広島市PTA協議会)の役員さんと一緒に市教育委員会へ行きました。そこで初めて骨子・試案を見せられ、他の自治体の条例も分厚い資料をいただいて説明を受けた。親は「個どものため」っていう言葉には正直弱い。子供のため、子供のためと連呼され「あぁ、それは良いものかもしれない」という意識で話を聞きました。私は保育園でも朝食抜きや母親に感情的に扱われる園児がいることを承知していますが、話を聞き終えると「いやぁ、いらんじゃろう」って思いました。
 虐待・いじめ等から子供達を守っていく条例は他にある。虐待防止条例であったり、青少年健全育成条例であったり、また色々な機関が活動し、頑張って助けようとしている。そしてほとんどの親は様々な問題に直面しながらも懸命に子育てをしていて、子供達も一生懸命生きてます。そこにこの条例を持ってこられたら「一体どうなるの」と思ったのが第一印象です。それをぶつけながら考えながら、これまでみんなと話し合いをしてきました。